偵察魂 

 ウエストがきつくなってきたな~、

 独り言ちた考子は膨らみ始めたお腹に手を当てた。

 そろそろかな~、
 
 また独り言ちて、マタニティ用の服への切り替えを考え始めた。
 しかし、いかにも妊婦さんという服は着たくなかった。
 どうせなら、お洒落なものにしたかった。
 だから、センスの良い妊婦服を探すために町に出かけた。
 本当は二人で行きたかったのだが、新は当直で病院に出勤していた。
 
 週末の繁華街は家族連れやカップルで賑わっていて、一人で歩いていることが場違いのように思えた。
 彼が普通のサラリーマンだったら土日は一緒に居られるのに、と自分勝手な考えが一瞬過ったが、そんなこと思っちゃダメ、と頬を抓って戒めた。
 彼は遊んでいるわけではない、仕事をしているのだ。
 それも、自分のような妊婦のために働いているのだ。
 だから彼を誇りに思うべきなのだ。
 考子はもう一度頬を抓るようにして、心の中で謝った。