翌日の仕事帰り、考子は昨日とは別のドラッグストアを3軒回った。
 しかし、マスクは何処にもなかった。
 そして、3軒共に次の入荷は未定だと告げられた。
 その上、更にショックなことを知った。
 消毒液とハンドソープも売り切れていたのだ。
 
「これじゃあ、三重苦じゃない」

 空っぽの棚を見ながら、思わず愚痴が出た。
 でも、諦めるわけにはいかないので、少し遠回りをして、もう一軒ドラッグストアに寄った。
 しかし、そこも同じだった。
 マスクも消毒液もハンドソープも売り切れていた。
 考子はガッカリして店を出ようとしたが、思い直して店員を探した。
 この店では次の入荷予定を聞いていなかったからだ。
 未定と言われるのはわかっていたが、確認しないまま勝手に判断するわけにはいかない。

 男性化粧品売り場で品出しをしている若い男性店員を見つけたので、マスクの次の入荷予定を聞いた。
 すると、思いがけない返事が返ってきた。
 
「明日の朝入荷予定です。先着順になりますが、お一人様1箱限定で販売するようになると思います」

 考子は飛び上がって喜びそうになった。
 しかし、店員は釘を刺すのを忘れなかった。
 
「皆様かなり早い時間から並ばれると思いますので、開店時間に来られても売り切れているかもしれません。その時はご容赦ください」

「かなり早い時間って何時くらいですか?」

「そうですね~、開店の1時間前にはかなり並ばれていると思います」

 このドラッグストアの開店時間は10時だった。
 ということは、9時前に並ばないと買えないことになる。
 考子は8時から並ぶことにその場で決めた。
 そのためには午前中半年休を取らなければならない。
 こんなことで貴重な年休を消化したくはなかったが、背に腹は代えられないので、半年休取得もその場で決めた。
 そして、貴重な情報を教えてくれた店員にお礼を言って、その店をあとにした。