次の日の夕食後、考子は気になっていたことを新にぶつけた。

「大丈夫?」

「何が?」

「何がって……、なんていうか……、その~、あれよ、あれ」

「あれって?」

「つまり、その~、あの~、最近求めてこないから……」

 アッ、というような表情になった新は思わず吹き出しそうになった。

「あ、違うのよ。別にしたいっていうわけじゃないんだけど、あの~、あなたが我慢しているんじゃないかなって思って」

 考子の顔は真っ赤になっていた。

「じゃあ、襲っちゃおうかな」

 にやけた顔をした新がガォ~と叫んで、考子に飛びつくふりをした。

「もう~、心配しているのに茶化さないでよ」

 考子が膨れたふりをして背を向けると、「ごめん、ごめん」と新が後ろから抱きしめて首筋にキスをした。

「こっち向いて」

 考子がそのままの姿勢で新の方に首を傾けると、首を突き出すようにしてキスをした。

「機嫌治った?」

 考子の体をくるんと180度回して、正面から抱きしめた。
 そして、たっぷり時間をかけてキスをしたあと、真面目な顔になって考子の目を直視した。
 それは産婦人科医の顔だった。
 
「本当は君と毎日セックスしたいけど、妊娠の初期は子宮が収縮して出血しやすい時期でもあるから、セックスは控えた方がいいと思うんだ。切迫流産なんてことになったら大変だからね。安定するまでは、というか、妊娠中は我慢することに決めたんだ。それに、セックスしなくったって、君を抱きしめたり、キスしたり、ペッティングできればそれで十分幸せだからね」

 それを聞いて、考子は泣きそうになった。
 嬉しくて、体の芯がジンと熱くなった。
 
 あ~、なんて素敵な夫なのだろう。
 
 考子はメロメロになって新の首に両腕を回した。
 
「ありがとう。あなたと結婚出来て幸せ」

「僕こそ幸せだよ。世界一幸せ」

 二人は時を忘れてキスを交わし続けた。