「そこから生命誕生へと繋がっていくんだよね」

「そうなの。熱水噴出孔がある場所で最初の生命が誕生したことはこの前話したわよね」

 新は頷き、「単細胞の微生物だったよね」と答えた。
 
「ありがとう、覚えてくれていて」

 自分の話に興味を持って積極的に理解しようとする夫がたまらなく愛しくなった。
 だから抱きつきたくなったが、ぐっと我慢して話を続けた。
 
「単細胞の生物は核を持っていない原始的な形をしていたの。そして、酸素がなくても生きていくことができたの。でもね、海の中で取り込める有機物には限界があって、自分で栄養を作り出す必要に迫られたの」

「それって光合成?」

「ピンポン。あなたって凄~い」

 考子がキッスを投げると、新は口をすぼめて受け取った。
 それに気を良くした考子は更に熱を込めて話を続けた。
 
「シアノバクテリアという光合成をするバクテリアが単細胞生物の中に入り込んで、それが葉緑素になって光合成を始めたの。その中から藻類が現れて更に光合成が進んで、そこで生み出された酸素が海中に蓄えられていったの。海の中に酸素が増えてくると、それを利用して呼吸する微生物も誕生したの。海の中に多様性が生まれたのよ」