食後、ソファに移った考子は後片付けを済ませて新が戻ってくるのを今か今かと待ちわびていた。
 話したいことがいっぱいあるのだ。
 大好物の地球科学について、話したくて話したくてウズウズしているのだ。
 
「お待たせ」

 エプロン姿の新が考子の横に座った。

「似合うだろ」

 エプロンの胸の部分を両手の親指で前に突き出した。
 そこには地球のイラストが描かれていた。
 そして、Save the Earthの文字も。
 
「地球を救え、か……」

 ウキウキしていた気持ちが一瞬にして萎んでしまった考子は、大きなため息をついた。
 そして、「こんな状態になるとは地球さんもびっくりしているわよね」とエプロンのイラストに向けて同情の言葉を投げた。
 
 新は無言でエプロンの紐を解いて、それを畳んでテーブルの上に置いたが、Save the Earthの文字を隠すように畳んだので、地球のイラストしか見えないようになった。

「ありがとう」

 心情を汲んでくれた新の優しさが嬉しかった。
 この人が夫で良かったと思った。
 
「さあ、地球誕生の話を聞かせておくれ」

 父親が娘に話すような口調で促すと、考子はニッコリ笑って新を見つめた。

「むかしむかし、あるところに」

「コラ! それは日本昔話だろ」

 新がゲンコツで頭を叩くふりをしたので、考子はペロッと舌を出した。

「んん、大変失礼いたしました。それでは、」

 考子はテーブルの上の地球のイラストを見つめて深呼吸をした。