「乾杯♪」

 テーブルに座った二人はグラスを合わせた。
 新はビール、考子はノンアルコールビールだった。
 
「妊娠中はアルコールを我慢しなくちゃね」

 自らに言い聞かすように呟いた考子が、缶に印刷されているアルコール0.00パーセントという表示を見つめた。

「僕だけお酒飲んでごめんね」と謝った新は、思い詰めたような声で「君の妊娠期間中は僕もお酒を止めようか」と考子の顔を窺った。

「いいわよ、そんなことしなくても。大丈夫、我慢できるから。その代わり出産して授乳期間が終わったら、素敵なレストランでおいしいお酒を飲ませてね」

「うん、わかった。約束する」

 ほっとした表情で新がビールを飲み干した。

「もう一つ約束するよ。夕食後の片付けは僕がすることにする。食器を洗って拭くことを毎日の日課にするよ」

 あらまあ、と大きく目を見開いた考子に新がウインクをした。