「可愛い女の子ですよ」

 助産師から受け取った赤ちゃんは天使のような顔をしていた。

「天使より可愛いね?」

 新はもうデレデレだった。

「イナイイナイバ~」

 まだ目も見えないのに、必死になってあやしていた。
 その姿は新米パパそのものだった。
 決して産婦人科医とは思えなかった。
 でも、それが嬉しかった。
 妊娠中は胎芽とか胎児という専門用語しか使わなかったから少し心配だったが、彼の満面の笑みを見ると、その不安は吹き飛んだ。
 
「ありがとう」

 新は考子の耳元で囁いた。

「こんなに可愛い子供を産んでくれて、本当にありがとう」

 さっきまで緩みっぱなしだった新の瞳が大きな泉の中で揺れていた。