偵察魂 

 あっ!

 考子は体の異変に気がついた。
 破水して、〈おしるし〉が出てきたのだ。
 血液が混じっていて、粘っこい液体だった。
 急いでナプキンをショーツに当てて、新を呼んだ。

「子宮頚管を閉じていた粘液性の栓が外れて、そのあと羊膜(ようまく)にひびが入って破れたんだと思うよ」

 新は落ち着いていた。

「そんな学術的な話はどうでもいいから、どうしたらいいか教えてよ」

 考子は落ち着きを失くしていた。

「気持ち悪いから、シャワー浴びてくるわね」

「ダメだ!」

 新が即座に否定した。

「バイ菌が入る可能性があるからシャワーなんてとんでもない。とにかく、陣痛が始まるまでに病院に行った方がいいから、すぐに支度をしよう」

 新はスマホを手に取って、産婦人科に連絡をした。
 それから、バスタオルを取りに行った。
 
「これをお尻に当てて」

 考子が指示に素直に従うと、新は準備していた入院用のバッグを手に持って、反対の手で考子を支えた。

「歩けるかい?」

 考子は頷き、そろそろと歩いた。
 そして、新が運転する車で病院へ向かった。