■ Save the Earth ■

 地球は悲鳴を上げています。
 何故?
 それは、人間の無知と欲望と欺瞞(ぎまん)が地球を痛めつけているからです。
 豊かな生活と引き換えに良心を悪魔に売っているからです。
 経済優先が及ぼす悪影響を正面から見つめることもなく、目の前の享楽に溺れているからです。
 特に、野心を持った指導者たちの無知と欲望と欺瞞は目を覆うばかりです。

 ある政治家は「温暖化問題はでっち上げだ」とうそぶきました。
 そして、パリ協定を離脱し、航空宇宙局の地球温暖化ガス調査活動予算を削減しました。

 ある政治家は自国の研究機関の警告を無視し、農牧地開拓のための野焼きや違法伐採に目を瞑りました。
 その結果、世界最大の熱帯雨林で火事が多発して、森林破壊が一気に進みました。

 ある政治家と経営者は二酸化炭素の排出など気にもかけず、石炭火力発電を推進しました。
 
 ある政治家は「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべき」とにこやかに笑いました。

 その発言を聞く度に、そして行動を目にする度に、地球は眉をひそめました。
 そして、「地球の立場に立って物事を考えろ!」と声を大にして叫ぼうとしました。
 しかし、地球は声帯を持っていませんでした。
 言葉を発することはできないのです。
 唇を噛むことしかできませんでした。

 そんな中、一人の少女が立ち上がりました。
 彼女は地球の代弁者でした。
 指導者たちの無知と欲望と欺瞞(ぎまん)を見かねて、北欧の地から声を発したのです。

「あなた方はすべてが間違っています。人々は苦しんでいます。人々は死んでいます。生態系は崩壊しつつあります。私たちは大量絶滅の始まりにいるのです。だから、永遠に続く経済成長というおとぎ話をしている場合ではないのです。事実に目を向けてください。行動を起こしてください。もし、早急に行動を起こさないならば、あなた方は邪悪そのものです。もし、これ以上地球にダメージを与えるなら、あなた方を絶対に許しません」

 すると、世界中から共感の拍手が沸き起こりました。
 しかし、ある政治家は冷笑を浮かべて皮肉りました。
「落ち着きなさい。怒りを収める術を学びなさい。友達と良い映画を見に行きなさい」と。
 更に、別のある政治家は、「彼女には共感しない。現代の世界が複雑で多様であることを彼女はわかっていない」と突き放しました。
 
 どちらが正しいのでしょうか?
 
 その答えを地球は知っています。
 そして、もうそんな議論をしている場合ではないことを。
 破滅へのカウントダウンはどんどん進んでいるのです。
 
 地球は大きなため息をついて、天空に浮かぶ終末時計を見上げました。
 1本しかない針は、残り100秒を指していました。
 
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