「あった。これだ。年代別投票率」
画面を真理愛に見せた。
すると、彼女の顔がパッと明るくなった。
「本当。これよ、これ」
画面には20歳から79歳までの1歳毎と、80歳以上の男女別投票率の一覧が示されていた。
「20代、30代が低いわね」
真理愛が指摘した通り、20代はすべての年齢で投票率が40パーセントを切っていた。
30代も50パーセントを上回る年齢は皆無だった。
「それに比べて60歳以上は高いわね。概ね三分の二を超えているわ。凄い!」
考子が驚きの声を発した。
「鍵は20代、30代の女性ね。彼女たちをどうやって投票所に行かせるか」
「それには、行かない理由を掴まなくっちゃ」
考子の指がせわしなく動いて、瞬く間に目当ての情報を探し出した。
「なるほどね。衆議院選挙と参議院選挙では若干違いがあるけど、『選挙に関心がない』『適当な候補者も政党もない』『仕事があったから』『私一人が投票してもしなくても同じだから』というのが上位に来ているわね」
やっぱりね、というような表情を浮かべた真理愛の頭にはすぐに対応策が浮かんだようだった。
「『仕事があったから』への対策は、期日前投票の周知徹底よね。それと、駅や会社の近くの身近な投票場所の確保かな」
「問題は『選挙に関心がない』『適当な候補者も政党もない』『私一人が投票してもしなくても同じだから』という理由への対策よね」
「そうね。投票と自分の生活向上が密接に結びつかないと投票所へは行ってくれないかもしれないわね。でも、これは難しいわね。その解決策を提示できる女性候補がいないと興味すらわかないかもしれないし。そうなると、魅力あふれる女性候補の発掘が必要か~。まてよ、そもそも立候補している女性がどのくらいいるのかな?」
話が根本に戻ってしまったので、考子はまた指をせわしなく動かしたが、その指が止まった瞬間、大きなため息が出た。
「ダメだわ。立候補者自体が少ない。直近の参議院選挙でいうと28.1パーセント。前回より3.4パーセント増えているけどまだまだ少ないわね。全体の四分の一をやっと超えたくらいだから。それに、最大政党である自民党は15パーセントしかないの。これじゃあ女性議員数は増えないわね」
「ということは、先ず女性候補者数を大幅に増やすことが必要ね。そのためには政党ごとに候補者数を男女同数にするルール作りがいいかも知れないわね。それと、数だけ多くても仕方ないから、女性の生活向上に直結する政策を立案する能力のある魅力的な女性候補の発掘が必要よね。そして20代、30代の女性に対する啓発活動ね。この三つをセットでやる必要があるわね」
「う~ん、そうだけど……」
残念だけど頷けないわ、というふうに考子が顔を曇らせると、真理愛も同じような表情になって、声の調子を落とした。
「そうなのよね。言ってはみたけど、それを実現させるのは簡単ではないわね」
二人から声が消えた。
偉そうなことを言っても自分が立候補するわけではなく、女性の生活向上に直結する政策立案ができるわけでもなかった。
せいぜい投票所に行くことが関の山だった。
真理愛は子育てが始まったばかりだし、考子は出産を控えている。
それに、新型コロナの感染拡大がある。
自らが政治活動に参加するのは無理だった。
「女って大変よね~」
真理愛から思わず愚痴のようなため息が漏れた。
「そうなのよね。でも、それを言ってたら何も変わらないし……」
「でも、子育てを放棄して、仕事を辞めて、政治の世界に飛び込むのは無理だし……」
「う~ん、そうなんだけど……。でも、子育てをしながら、仕事をしながら、政治活動をすることってできないのかしら」
「そうね~、それができたら言うことないんだけどね」
真理愛は頬杖をついて、また大きなため息をついた。
そして、「そんなロールモデルがいればね~」と半ば諦めの視線を考子に送った。
画面を真理愛に見せた。
すると、彼女の顔がパッと明るくなった。
「本当。これよ、これ」
画面には20歳から79歳までの1歳毎と、80歳以上の男女別投票率の一覧が示されていた。
「20代、30代が低いわね」
真理愛が指摘した通り、20代はすべての年齢で投票率が40パーセントを切っていた。
30代も50パーセントを上回る年齢は皆無だった。
「それに比べて60歳以上は高いわね。概ね三分の二を超えているわ。凄い!」
考子が驚きの声を発した。
「鍵は20代、30代の女性ね。彼女たちをどうやって投票所に行かせるか」
「それには、行かない理由を掴まなくっちゃ」
考子の指がせわしなく動いて、瞬く間に目当ての情報を探し出した。
「なるほどね。衆議院選挙と参議院選挙では若干違いがあるけど、『選挙に関心がない』『適当な候補者も政党もない』『仕事があったから』『私一人が投票してもしなくても同じだから』というのが上位に来ているわね」
やっぱりね、というような表情を浮かべた真理愛の頭にはすぐに対応策が浮かんだようだった。
「『仕事があったから』への対策は、期日前投票の周知徹底よね。それと、駅や会社の近くの身近な投票場所の確保かな」
「問題は『選挙に関心がない』『適当な候補者も政党もない』『私一人が投票してもしなくても同じだから』という理由への対策よね」
「そうね。投票と自分の生活向上が密接に結びつかないと投票所へは行ってくれないかもしれないわね。でも、これは難しいわね。その解決策を提示できる女性候補がいないと興味すらわかないかもしれないし。そうなると、魅力あふれる女性候補の発掘が必要か~。まてよ、そもそも立候補している女性がどのくらいいるのかな?」
話が根本に戻ってしまったので、考子はまた指をせわしなく動かしたが、その指が止まった瞬間、大きなため息が出た。
「ダメだわ。立候補者自体が少ない。直近の参議院選挙でいうと28.1パーセント。前回より3.4パーセント増えているけどまだまだ少ないわね。全体の四分の一をやっと超えたくらいだから。それに、最大政党である自民党は15パーセントしかないの。これじゃあ女性議員数は増えないわね」
「ということは、先ず女性候補者数を大幅に増やすことが必要ね。そのためには政党ごとに候補者数を男女同数にするルール作りがいいかも知れないわね。それと、数だけ多くても仕方ないから、女性の生活向上に直結する政策を立案する能力のある魅力的な女性候補の発掘が必要よね。そして20代、30代の女性に対する啓発活動ね。この三つをセットでやる必要があるわね」
「う~ん、そうだけど……」
残念だけど頷けないわ、というふうに考子が顔を曇らせると、真理愛も同じような表情になって、声の調子を落とした。
「そうなのよね。言ってはみたけど、それを実現させるのは簡単ではないわね」
二人から声が消えた。
偉そうなことを言っても自分が立候補するわけではなく、女性の生活向上に直結する政策立案ができるわけでもなかった。
せいぜい投票所に行くことが関の山だった。
真理愛は子育てが始まったばかりだし、考子は出産を控えている。
それに、新型コロナの感染拡大がある。
自らが政治活動に参加するのは無理だった。
「女って大変よね~」
真理愛から思わず愚痴のようなため息が漏れた。
「そうなのよね。でも、それを言ってたら何も変わらないし……」
「でも、子育てを放棄して、仕事を辞めて、政治の世界に飛び込むのは無理だし……」
「う~ん、そうなんだけど……。でも、子育てをしながら、仕事をしながら、政治活動をすることってできないのかしら」
「そうね~、それができたら言うことないんだけどね」
真理愛は頬杖をついて、また大きなため息をついた。
そして、「そんなロールモデルがいればね~」と半ば諦めの視線を考子に送った。



