世界には拉致被害者や難民だけでなく迫害に苦しむ多くの人がいるの。
 歴史的に有名なのがヨーロッパにおけるユダヤ人の迫害、アラブ諸国でのクルド人の迫害、シリア内戦における自国民への迫害なんだけど、最近でもミャンマーにおけるロヒンギャの迫害がクローズアップされているわ。
 迫害は現在進行形なのよ。
 そして、それに苦しんでいる人の数は計り知れないの。
 紛争や迫害を逃れて家を追われた人の数は2018年で7,000万人に上ると言われているし、その50パーセントが18歳未満の子供なの。
 更に、家族や保護者とはぐれて一人で避難してきた子供は10万人を超えているの。
 彼らが生きていく術はあるのだろうかと思うと、わたしのちっちゃなハートがまた痛みを覚えたの。
 すると、誰かの声が聞こえてきたの。
 それはとても厳しい響きを持っていたわ。
 
「人道という言葉がある。人間として守り行うべき道のことである。それは、人間らしく生きる権利を守ることでもある。しかし、現実はそうなっていない。民族に対する根強い偏見が世界中に広がっているのだ。中国によるウイグル族の問題、チベット自治区の問題、中東におけるパレスチナの問題など枚挙にいとまがないほどだ。それは人道に反する行為であるにもかかわらず、人が人を差別する愚行が今もまかり通っているのだ。多くの為政者が人の道を外れた行いを続けているのだ」

 声が消えた瞬間、わたしの特別な使命はこのことに関係しているかもしれないとふと思ったの。
 そして、それはママから貰った遺伝子と意志に影響されているような気がしたの。
 ママのご先祖は政治家だったし、ママの尊敬する人は国連難民高等弁務官だったから、人の道を守る仕事がわたしの使命のような気がしてきたの。
 まだはっきりとはわからないけど、もしそうなら相当な覚悟を持ってやらなければならないわね。