偵察魂
「ねえ、どっちだと思う?」
「何が?」
「赤ちゃん」
「ん~、どっちって……」
「じゃあ、どっちが欲しい?」
「ん~、急に言われても……、でも、どっちも欲しいかな」
「どっちも?」
「そう、どっちも。男の子と女の子、両方欲しい」
「じゃあ、最初の子はどっちがいい?」
「ん~、そうだな~、どちらかと言えば、女の子かな」
「どうして?」
「どうしてって言われても……、う~ん、なんとなくなんだけど、なんて言うか、女の子って可愛いしさ、それに、昔から一姫二太郎って言うじゃない」
「うん、知ってる。確か、女の子一人と男の子二人っていう意味だったわよね」
「違うよ。そう思っている人が多いかも知れないけど、一人目は女の子で、二人目が男の子っていうのが正解なんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ……。私は間違って覚えていたのね。なんでだろ? ま、そんなことどうでもいいけど、でも、なんで一人目が女の子なのかな?」
「それはね、女の子の方が育てやすいからなんだって。初めての子供が産まれてきた時、当然ながら両親も初めての子育てになるわけで、それなら育てやすい方がいいということで、この言葉が生まれてきたらしいんだよ」
「ふ~ん、女の子の方が育てやすいんだ。知らなかった。でも、昔は世継は男の子って言われていたわよね。この言葉はそれに反するんじゃないの?」
「確かに。そう言われてみればそうだね。特に大名にとってはお家の存続に関する死活問題だから、男子待望論があったはずだよね」
「絶対そうだと思うわ。昔は完全に男尊女卑だったからね」
「確かにね。大名の妻が女の子を生んだとしたら大変だっただろうね。『なんだ、女か』って言われたかもしれないね」
「酷い話よね。男と女を差別しているんだから。それに、どっちが生まれるかなんて、妊婦には決められないのにね。信じられない」
「そうか~」
「何? 何が、そうか、なの?」
「いや、だからこそこの言葉が生まれたんじゃないかって思ったんだ」
「どういうこと?」
「女の子を生んだ女性は役立たずみたいに言われることが多かったから、そんなことはないよ、育てやすい女の子を最初に産めば育児が楽だし、育児に慣れた頃に男の子を産めばいいんだから、っていう意味で、つまり、女の子を出産した女性を慰めるために言い出したんじゃないのかな」
「なるほどね。それはあるかもね。次に男の子を産んだらいいんだよ、って言われたら気持ちが楽になるしね」
しかし、そうは言ってみたものの、そんなことを気にしながら出産と育児をしていた当時の女性がかわいそうで仕方なかった。
と共に、今が戦争のない平和な時代で良かったと思った。
男女平等が謳われる時代で本当に良かったと思った。
するとそれを察したのか、「どっちでもいいよ。世継なんて関係ないし、元気に生まれて来てくれれば、それだけでいいんだ」と新がきっぱりと言い切った。
「そうよね。それが一番よね。元気に生まれてくればどっちでもいいわよね」
頷いてお腹に手を当てた考子は、幸せそうな表情で新の肩に頭を乗せた。
「ねえ、どっちだと思う?」
「何が?」
「赤ちゃん」
「ん~、どっちって……」
「じゃあ、どっちが欲しい?」
「ん~、急に言われても……、でも、どっちも欲しいかな」
「どっちも?」
「そう、どっちも。男の子と女の子、両方欲しい」
「じゃあ、最初の子はどっちがいい?」
「ん~、そうだな~、どちらかと言えば、女の子かな」
「どうして?」
「どうしてって言われても……、う~ん、なんとなくなんだけど、なんて言うか、女の子って可愛いしさ、それに、昔から一姫二太郎って言うじゃない」
「うん、知ってる。確か、女の子一人と男の子二人っていう意味だったわよね」
「違うよ。そう思っている人が多いかも知れないけど、一人目は女の子で、二人目が男の子っていうのが正解なんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ……。私は間違って覚えていたのね。なんでだろ? ま、そんなことどうでもいいけど、でも、なんで一人目が女の子なのかな?」
「それはね、女の子の方が育てやすいからなんだって。初めての子供が産まれてきた時、当然ながら両親も初めての子育てになるわけで、それなら育てやすい方がいいということで、この言葉が生まれてきたらしいんだよ」
「ふ~ん、女の子の方が育てやすいんだ。知らなかった。でも、昔は世継は男の子って言われていたわよね。この言葉はそれに反するんじゃないの?」
「確かに。そう言われてみればそうだね。特に大名にとってはお家の存続に関する死活問題だから、男子待望論があったはずだよね」
「絶対そうだと思うわ。昔は完全に男尊女卑だったからね」
「確かにね。大名の妻が女の子を生んだとしたら大変だっただろうね。『なんだ、女か』って言われたかもしれないね」
「酷い話よね。男と女を差別しているんだから。それに、どっちが生まれるかなんて、妊婦には決められないのにね。信じられない」
「そうか~」
「何? 何が、そうか、なの?」
「いや、だからこそこの言葉が生まれたんじゃないかって思ったんだ」
「どういうこと?」
「女の子を生んだ女性は役立たずみたいに言われることが多かったから、そんなことはないよ、育てやすい女の子を最初に産めば育児が楽だし、育児に慣れた頃に男の子を産めばいいんだから、っていう意味で、つまり、女の子を出産した女性を慰めるために言い出したんじゃないのかな」
「なるほどね。それはあるかもね。次に男の子を産んだらいいんだよ、って言われたら気持ちが楽になるしね」
しかし、そうは言ってみたものの、そんなことを気にしながら出産と育児をしていた当時の女性がかわいそうで仕方なかった。
と共に、今が戦争のない平和な時代で良かったと思った。
男女平等が謳われる時代で本当に良かったと思った。
するとそれを察したのか、「どっちでもいいよ。世継なんて関係ないし、元気に生まれて来てくれれば、それだけでいいんだ」と新がきっぱりと言い切った。
「そうよね。それが一番よね。元気に生まれてくればどっちでもいいわよね」
頷いてお腹に手を当てた考子は、幸せそうな表情で新の肩に頭を乗せた。