この日の会話をきっかけに、考子は色々な本を読んで、食事についての勉強を本格的に始めた。
 そして、積極的に食べたらいいものを選んでいった。
 
「赤ちゃんの歯や骨のためにはカルシウムが大切よね。牛乳、チーズ、ヨーグルト、それに、ちりめんじゃこや納豆もいいらしいから、毎日食べるようにしようっと。それから、妊娠中は便秘になりやすいみたいだから、食物繊維を多く摂った方がいいわよね。玄米ご飯でしょ、ゴボウでしょ、サツマイモでしょ、コンニャクでしょ、それから、レンコンやキノコもいいって書いてあるわ。頑張って食べよう。そして……、鉄分が必要なのか。それには牛肉の赤身やいわし、あさり、煮干し、ひじき、ほうれん草、小松菜がいいって書いてあるから、これもバランスよく食べなきゃね。あとは……、葉酸? なになに? ビタミンBの一種なんだ。赤ちゃんの発育や血液の生産に必要って書いてある。ふ~ん。じゃあ、これも意識して食べなきゃね。ほうれん草に、ブロッコリー、さつまいも、バナナ、イチゴね」

 考子は一人でブツブツ言いながらメモを取って、冷蔵庫の中身を確認して、エコバッグを手に持って、ペッタンコの靴を履いて、足取り軽やかにスーパーマーケットへ向かった。
 外は春の陽気が満ち満ちていた。