偵察魂 

「あっ」

 考子は驚いて、お腹を押さえた。

「どうしたの?」

 心配そうに新が覗き込んだ。

「感じた」

「えっ、何が?」

「赤ちゃん」

「赤ちゃんって……」

 考子がにっこりと笑った。

「私のお腹を蹴ったの」

「えっ、本当? どこ、どこ?」

 新は考子が押さえている場所にそっと手を置いた。
 しかし、何も感じなかった。
 しばらく手を置き続けたが、変化はなかった。
 
「疲れて寝ちゃったかな?」

 新はそっと手を離したが、その手を考子の肩に置いて、笑みを浮かべた。

「良かったね、感じられて」

「うん、すごく嬉しい。ここに赤ちゃんがいるんだって感じることができて、すっごく幸せ。そして、とっても愛しい。だから、守ってあげたいって、本気で守りたいって、心の底からじわ~っと湧き出てきているの。わかる?」

 新は何も言わず考子のお腹に服の上から口づけた。
 そして、「ママを幸せにしてくれてありがとう」と囁いた。