わたし 
          
 博士号を取る人が減ってるんだって。
 それだけじゃなくて、せっかく博士号を取っても就職するところがないんだって。
 高い授業料を払ってそんなんじゃ、やる気出ないわよね。
 先端技術を学んで博士号を取って時代を先取りした仕事に就こうと考えてたのにがっかりだわ。
 嫌になっちゃった。
 
 でもね、なんでこんなことになっているのか知りたくなったから、偵察魂に調べてもらったの。
 そうしたらね、大変なことがわかったの。
 日本と海外では博士課程に対する考え方が根本的に違っていることが原因だったの。
 
 どう違うのかって?
 
 それがね、物凄く違うのよ。
 日本では博士課程で学ぶ人は大学に授業料を払っているわよね。
 でもね、外国ではまったく違うらしいの。
 なんと、お給料が貰えるんだって。
 アメリカやヨーロッパや中国なんかでは所属する研究室がお給料を払うらしいの。
 勉強しながらお給料を貰えるのよ。
 凄くない? 
 しかも、就職したら四年制の大学を卒業した人よりも1.7倍もお給料が貰えるんだからやりがいがあるわよね。
 これだから外国ではどんどん博士号取得者が増えているのよ。
 その結果、先端技術の開発が進んで、それを実用化するベンチャー企業も続々現れて、経済が活性化しているのよ。
 
 (ひるがえ)って日本は旧態依然のままだから世界の先進国から大きく後れを取ってしまったんだと思うわ。
 中国の三分の一しかない研究開発費に加えて、大学院生への対応が遅れているんだから目も当てられないわよね。
 今すぐなんとかしないと大変なことになってしまうわよ。
 教育関係の皆さん、文科省の役人さん、政治家さん、経営者さん、一刻も早くなんとかしてください。
 博士課程に対する対応がガラパゴスのままでは世界からどんどん離されてしまいますよ。
 今すぐやらないと大変なことになりますよ。
『科学技術立国を目指す』なんていっても、このままでは絵に描いた餅でしかなくなりますよ。
 大学院に行きながらお給料が出るように、そして、高い初任給を貰えるように早急に対応してください。
 お願いします。