世界恐慌、それは、1929年10月24日の株価大暴落に端を発した異常な事態であり、瞬時に世界を恐怖に陥れたモンスターだった。
 それが始まった場所は同じニューヨークだった。
 株価は七分の一にまで急落し、銀行だけで6千軒が倒産し、失業者は1千万人を超えた。
 人々は路頭に迷い、全財産を失った者は自らの命を絶つ道を選んだ。
 いや、それしか選択肢がなかった。
 絶望が支配する中で正常な判断ができる者はほとんどいなかったのだ。
 
 新はそれを本で読んだことがあった。
『アメリカの死んだ日』というドキュメントだった。
 書店で目にした瞬間、なんという恐ろしいタイトルだろうと思った。
 しかし、買わずにはいられなかった。
 家に帰ってすぐに読み始めたが、ページをめくるたびに恐怖を感じた。
 それがまた蘇ってきて、震えのようなものを感じた。
 
 同じことが起こるのだろうか? 
 ニューヨーク発の大恐慌が起こるのだろうか? 
 そうなったら、どうなるのだろうか? 
 
 新の気持ちがどんどん沈んでいった。