お風呂に入れられて毛はふかふか。
 豪華な食事でおなかいっぱい。
 かわいい、かわいいと褒め称えてくれるメイド服のお姉さんたち。

 ……これはものすごく歓迎されている?

「ルーク様、お犬様のお支度整いました」
「あぁ」
 あ、さっきのイケメンだ。
 ルークって言うんだ。
 裸にガウンはセクシーすぎるけどね。
 
 ひょいっと抱っこされ、隣の部屋へ。
 ふかふかのベッドに乗せられた結実は心臓が飛び出るほど驚いた。

「キャン!」
 まさか一緒に寝るつもり?

「キャウキャウ!」
 嘘でしょ、イケメンと?

「キャウキャウうるさいから、おまえの名前はキャルだな」
 寝転びながらキャルの頭を優しく撫でると、ルークは枕とクッションを整え、キャルが眠りやすい高さに変える。
 
 この人、犬好き?

「……今日はキャルのおかげで助かった。ありがとう」
 そういえば、お犬様に命を救っていただいたって言っている人がいたけれど、あれはどういう意味なんだろう?
 ベッドの横の小さな明かりが消され、部屋が暗くなる。

「明日、俺と一緒に瘴気の森に行ってくれるか?」
「キャウ?」
 瘴気の森?

「あの森の瘴気に長い間包まれると病に侵されて死ぬ。だが犬と一緒なら大丈夫なんだ。お前は女神が俺たちに遣わした女神の化身だろう?」
「キャウ?」
 全然意味が分からないけれど、どういうこと?
 女神ってあの美人なくせに私を犬にしたあの人?
 瘴気って?
 病気で死ぬなんてイヤだけれど?
 
 聞きたいことはたくさんあるのに、イケメンはもう寝ている。
 名前はキャルなの?
 私は結実だけれど?
 なんで犬になっちゃったのかな……。

 その日、結実は夢を見た。
 
 ポメラニアンの姿の自分が金髪の美少女に変わる夢。
 柔らかそうな髪はポメラニアンの毛のように細く、クリッとした大きな目をした絵本に出てくるお姫様のような女の子だ。
 ポメラニアンのお腹の白い部分のようなふわふわのワンピースに白い靴。
 こんな美少女だったらよかったのになと思いながら、結実は夢の中で目を閉じた。