短いキャルの手は光りだし、人のような手に。
 ふわふわの毛は輝く長い髪に。
 急に背が高くなったかのような奇妙な感覚にキャルは首を傾げる。

「……女神だ」
「まさか、女神様に剣を向けてしまったなんて」
 驚きすぎて剣を落とした騎士たちは全員その場に跪く。

「キャウ?」
 あれ? 人の手だ。
 でも人の言葉が話せない?
 見上げれば犬の時よりも近くにイケメンの顔!

「キャウ!」
 近い! イケメンが近い!

「……キャルの目は黒いのか」
 犬の時と一緒だなとイケメンルークに破壊力満点の笑顔を向けられたキャルは真っ赤な顔になった。

「女神の遣いは渡さない」
 すっかり大人しくなった犬たちと戦意喪失した騎士たち。
 残るはおまえだけだがどうする? とルークはクリスティーナを睨みつけた。

「なんなの! ずっとルークと結婚するって決めてたのよ! 急に出て来たそんな女!」
「女神の遣いに失礼な言動はやめてください」
「チャーリー、あんたまで! 私がどれだけルークを好きか知ってるでしょ!」
「えぇ、ルークがどれだけあなたを嫌いかも知っています」
 下がってもいない眼鏡を押し上げながら、他国の王女に遠慮なく言ってしまうチャーリーに、ルークは思わず吹き出す。

「おまえとは絶対に結婚しない」
 好みじゃないんだと肩をすくめるルークの頬を、キャルは優しく包み込んだ。

「キャウキャウキャウ」
 嫌いでも女の子にそんな言い方はダメだよ。

「……可哀想って?」
 コクコクとうなづくとルークは困った顔で笑う。

「俺はキャルの方が何倍も魅力的に見えるけれど?」
「キャウ!」
 ホストか!

 金髪の女と楽しそうに笑うルークに、クリスティーナは唇を噛んだ。