二学期と言えばあと二つほど大きなイベントが残っている。ひとつは学期末に行われる奉納祭だ。神楽部では去年できなかった八岐大蛇伝説の練習が再開している。

そしてもうひとつは。


「なぁなぁ(くゆる)センセー」


三時間目の詞表現演習の小テスト中、そうそうに解くことを諦めた慶賀くんが黒板にもたれる薫先生を呼んだ。

薫先生は「ん?」と顔を上げた。


「鞍馬の神修っていつ行くんだ? 観月祭が終わって結構経ったのに、なんの話も聞かねぇんだけど!」


薫先生は少し呆れたように息を吐く。


「慶賀、テスト解き終わったの?」

「まだ!」

「先にそっちやろうね」


慶賀くんはちぇー、と不満気な顔をして渋々シャーペンを持った。

確かに二学期が始まってからもうひと月以上経っているのに、異文化交流学習の話がどこからも聞こえてこないのは少し妙だ。

数年ぶりに開催となった異文化交流学習は、京都鞍馬にある神役修霊高等学校(しんえきしゅうれいこうとうがっこう)とお互いの学生をお互いの学校へ派遣して異なる文化を学ぶ目的で開催される。一学期は鞍馬の神修の中等部と高等部の学生が約二ヶ月間私たちの学校で一緒に勉強した。

二学期は私たちが鞍馬の神修へ行く番だと聞いていたが、私達も二ヶ月間滞在するならそろそろ話が出てきてもおかしくないんだけれど。