「な、わた、え」
「瑞祥も同じ気持ちってことでいい?」
「あ、えっと……あの……」
うん、と応えた声は辛うじて私にも届いた。叫びたい気持ちをグッとこらえて必死に気持ちを落ち着ける。
ぎし、とまた橋が軋んで長い沈黙が流れた。
想像しちゃダメと思いつつ橋の上で何が起きているのかをあれやこれやと勘ぐっては赤面する。
だってこんなにも素敵な告白の瞬間に立ち会ってしまったんだから、仕方がないじゃないか。
「なぁ、ずっと前って……いつから?」
「少なくとも次の年も雄兎役に選ばれるために、そこまで好きじゃない倭舞を必死で練習するようになった頃かな」
二人が月兎の役に初めて選ばれたのが中学一年。"次の年"もということはつまり聖仁さんはその頃から瑞祥さんの事が好きだったんだ。
聖仁さんって別に舞はさほど好きじゃなかったんだ。でも瑞祥さんと月兎に選ばれるために必死に稽古したんだ。
以前の女子会で玉珠ちゃんが言っていた「素敵すぎて胸が苦しい」とはまさにこういうことか。
「お前、そんな態度……全然なかったじゃん」
「当たり前でしょ。好きだからこそ、言霊で縛りたくなかったんだよ」
「そ、か」
真っ赤になって縮こまる瑞祥さんが安易に想像できた。
その時、「こらお前らーッ!」と見回りの先生の声が聞こえて、二人が慌てて距離を取った音がした。
「性懲りもなくまた……って、なんだお前らか」
駆け付けてきた先生は聖仁さんたちを確認するなりそう言って息を吐く。