僕チョコ苦手なんだ、巫寿ちゃん友達と食べな。
そう譲ってくれた天叡さんと別れて、少し前から観月祭の後片付けが始まった社頭をキョロキョロと歩いていた。
絶対どこかにいるはずなんだけどなぁ、と人混みの中から背伸びをしたその時「何してんだ」と声をかけられた。
振り返ると丁度探していた人物が怪訝な顔で私を見下ろしている。
「恵衣くん! 丁度よかった、探してたの」
「何だよ」
「今手空いてる?」
まぁ、と少し警戒するような顔で私を見る。
そんなに疑わなくても、と苦笑いを浮かべながら手に持っていたチョコモナカを掲げる。
「これ、よかったら一緒に食べない?」
チョコモナカと私の顔を交互に見た恵衣くん。
「他の奴らと食えばいいだろ」
「そんなことしたら戦争になっちゃう」
私も初めは嘉正くんたちのことを考えたけれど、神修の学生は普段からアイスやジャンクフードに飢えている。
もし一緒に食べようなんて誘えば、間違いなく奪い合いの喧嘩が勃発する。
それにこれは観月祭を頑張った生徒へのご褒美だ。だったら受け取るのは運営を手伝った恵衣くんが一番相応しい。
「……どうも」
取り合いの殴り合いになる光景を想像したらしく苦い顔で大人しく受け取った恵衣くん。相変わらずお礼が下手くそだ。
庭行くぞ、と歩き出した恵衣くんの隣に並んだ。