「次は巫寿の番だな!」

「楽しみにしてるよ」


二人に背中を叩かれたその瞬間、言葉にはできないけれどとても大切な何かを受け取ったような気がした。


「さぁさぁ、とっとと着替えるぞ聖仁!」

「はいはい、それで富宇先生にアイス貰いに行くんでしょ。瑞祥は毎年それが一番の楽しみだもんね」


数分前まではあんなに素晴らしい演舞をしていた人たちとは思えないほど、すっかり普段通りに戻った二人。


「あ、私の分は厨房の冷凍庫に名前書いて放り込んどいてくれ」


え?と聖仁さん目を見開く。驚きは直ぐに心配の表情に変わる。


「どうしたの? お腹痛いの? それとも具合悪い? もしかして演舞中に足捻った? 毎年真っ先に貰いに行く瑞祥が後回しにするなんて……」


すかさず額に手を当てて熱を測り瑞祥さんの全身をくまなくチェックし始める聖仁さん。

少し顔を赤くした瑞祥さんは「ちげーし!」と押し退ける。


「クラスの男子に呼ばれてんだよ! 舞が終わってからでいいから、来週のテスト範囲を教えてくれって」

「……は?」


分かりやすく身に纏うオーラが変わった聖仁さんに、周りで見ていた私と天叡さんは天を仰いだ。

明日ならともかく来週のテスト範囲なら舞が終わった後じゃなくてもいいし、なんならトークアプリで聞けばいい。あえて今日のこの日を選んでそういったのは、間違いなく観月祭の伝説と関係しているはずだ。