観月祭も間近に迫ったある日の昼休み、その日は瑞祥さんと一緒にお昼を食べる約束をしていたので二人揃って広間へ向かっていると、「瑞祥さん! 巫寿さん!」と後ろから名前を呼ばれた。

振り返ると中等部二年の女の子が廊下の奥から手を振りながら走ってくる。寮の談話室で何度か話したことのある女の子だ。


「おー、どうした?」

「"美容クラブ"のワークショップに参加するか、聞きに回ってるんです。ほら、観月祭の日の放課後の」


あれか、と納得したように頷いた瑞祥さん。

一人だけ話についていけず「何のこと?」と尋ねた。


「あ、そっか。去年は応声虫の事件で開催してないから、巫寿さん知らないですよね。毎年、観月祭の日の放課後に女の子だけが参加出来る美容サークル主催のワークショップが開催されてるんです」


美容サークルといえば、神修に存在する非公認サークルのひとつだ。

神修では神楽部や究極祝詞研究部みたいな神職の奉仕活動に関連する部活や、剣術部や槍術部のように心身の強化をはかる部活が存在していて、参加は学生の自由意志に委ねられている。

けれど普通の高校にあるような軽音部や美術部、家庭科部などがない。だから、何人かの有志たちで非公認で活動しているサークルが無数存在している。

美容サークルにはニキビで困っていた時に一度だけ相談しに行ったことがある。