何でもそつなくこなす優秀な恵衣くんにも、きっと私たちには見せないような葛藤があるんだろう。


「学生組、最後にもう一度通すから舞台袖に上がりなさい」


クソ長説教性悪ハゲ妖怪────瑞祥さんがそう命名した本庁側の月兎の舞の担当者────に呼ばれた私たちは思わず「えぇ……?」と顔を顰める。

案の定、クソ長説教性悪ハゲ妖怪の耳に届き「今嫌そうな顔をしたな? そもそもこの月兎の舞というのはな」とあだ名通りの長い説教が始まる。

結局その後二回ずつ通して解放されたのは日付が変わる直前頃。次の日揃って寝坊をした私たちはまたハゲ妖怪に説教を頂戴することになった。