「では次は泰紀さん、発表してください」


はーい、と立ち上がった泰紀くんは頭頂部の丸をつけた。


「えーと、俺は頭のてっぺんを押される感覚がしたんだよなぁ。なんかこう、ツボを押されて"いでで"ってなる感じ」


隅によけていた教科書を捲った。頭頂部についての記述がある場所を指でなぞって心の中で読み上げる。

────頭のてっぺんに鈍痛を感じて疼くような痛みは、神の怒りに触れている疑いあり。痛みが強いほど神の怒りは強く、怒りが納まるまで祈念を行うこと。単に何かしらの感覚があるだけなら、警告、注意の暗示で本人に害が及ぶことはない。

なるほど、だったら泰紀くんの場合は。


「泰紀、お前何したんだよ! 神の怒りに触れるってよっぽどじゃね!?」


ゲラゲラ笑う慶賀くんに、すかさず「ちげーし!」と泰紀くんが噛み付く。


「俺の場合、神様からの注意と警告だつーの! これから怪我とかビョーキに用心して生活しろってことだよ! ていうかそういうお前はどーなんだよッ」


よくぞ聞いてくれましたとばかりに鼻を鳴らした慶賀くんは立ち上がって、孫悟空の頭の輪っかみたいな円を描き入れた。


「俺はここが紐で締め付けられる感じがした! センセーこれってまだ習ってないよな、どういうやつ!? 頭のてっぺんに近いほど神様の霊格が高いんだろ!」


確かに頭をぐるりと覆うように何かを感じる場合というのはまだ習っていなかった気がする。

試しに教科書をめくってみたがそれらしき記述はない。おそらく三年生で習う分野なんだろう。