「ではこの事から何が分かりますか、来光さん」
「はい。人差し指と中指なので巫寿ちゃんが言ったように父親と母親の霊です。自分の両親は健在なので生霊だと思います。連絡を無視してるので、その催促かなと」
結構です、と先生に席に戻るように促されて来光くんが戻ってきた。
「来光くん、あの……大丈夫?」
思わずそう声をかける。
来光くんは両親と絶縁関係にあると聞いている。日頃から連絡も取り合っていないし、長期休暇も実家ではなく間借りしている薫先生の家に帰っている。
そんな状態の両親が生霊になってまで来光くんに何かを伝えようとしているなんて、何かあったに違いない。
「あはは、全然大丈夫。いつもの事なんだよ。新学期とか学期末の度に"戻ってきて普通の学校に通え"って言ってくるんだ。世間体を気にする人たちだから僕が得体の知れない学校にいるのが気に食わないみたい。思い出した時だけそういう連絡してくるくせによく言うよねぇ全く」
世間話でもするような軽い口調でそう言った来光くん。
話しぶりから本人は大して気に留めていない様子なのが伝わってくるけれど流石に心配になる。
部外者の私が口を挟んでいいような内容ではないので、「何かあったら相談してね」とだけ伝える。
来光くんは「ありがとう」と嬉しそうにはにかんだ。