「────はい、では皆さんで考察していきましょうか」
無事にご祈祷が終わって恵衣くんが席に着いた。みんなは一斉に伸びをする。短いものとはいえ神事はやっぱりどこか空気が張りつめる。
それにしても、と私は未だ違和感の残る左手の指先をそっと撫でた。
先生がホワイトボードを引っ張ってきて真ん中に置いた。真ん中に簡単な人の頭と左手の絵を描く。
「じゃあ一人ずつ、何を感じたのかここに書き込んで発表していきましょう。まず恵衣さんからお願いします」
「はい」
立ち上がった恵衣くんはスタスタとホワイトボードに歩み寄ると赤いペンで頭頂部に丸を書いた。
線で引っ張り隣に「清水に触れた時のような心地よい冷たさ」と付け加えると、「あ、俺も」と嘉くんが同意する。
「頭頂部に心地よい感覚がありました。正神界系の中位の神が憑依していると思われます。神意にかなった状態だと判断しました」
頭頂部に清々しい感覚があるのは、憑霊観破法の中では最も普通の状態であるとされている。何事もなければ多くの人はこの状態になっている。
恵衣くんと嘉正くんがそう感じたのも何だか納得がいく。
「嘉正はともかく、無難にオリコウサンに面白みもなく生きてる恵衣ならまぁそうなるよねぇ」
明らかに褒めている口調ではない言い方に恵衣くんの眉がぴくりと動く。