みんなの勢いに先生は苦笑いを浮べた。
「では恵衣さん、お願いします」
「何で!? 恵衣のやつ全然元気に手ぇ上げてなかったじゃん!」
「斎主に元気の良さは必要ありませんよ」
笑いをこらえきれずにブフッと吹き出した音があちこちから聞こえた。
唇を突き出した慶賀くんが振り返って私たちを睨む。
「斎主たるもの、いかなる状況でも落ち着き冷静であること、参拝者に安心を与える威厳と品格がある事が大切です」
「つまりお前には落ち着きも威厳も品格もないってことだ」
ハンッと鼻で嘲笑った恵衣くんが見下した表情で前に出た。
何だとコンニャロウといきり立つ慶賀くんをみんなで押さえ込む。
「はいはい、騒ぎませんよ。それでは恵衣さん、お願いしますね」
ひとつ頷いた恵衣くんは用意された神具の前に立つ。どうどう、と馬のように宥められた慶賀くんは不服そうな顔のまましぶしぶ席に座った。
「"祭祀基礎"の授業はどこまで進んでいますか? 習ったもので、恵衣さんが出来るご祈祷であれば何でも構いませんよ」
「でしたら馬鹿が多いんで学業成就で」
すかさず嘉正くんが慶賀くんと来光くんの襟首を捕まえた。はいはい怒らないよー、と今にも恵衣くんに飛びかかりそうな二人を抑える。
どうして皆こうも仲良くできないかな。まぁ怒らせているのは間違いなく恵衣くんなのだけれど。