「慶賀、右の(さかき)が回ってるから直して」

「こうかー?」


その日の"憑霊観破(ひょうれいかんぱ)"3の授業は実践実習がメインだった。実習室に集まった私たちは授業で使う祭具を整える。

憑霊観破は、自分に取り憑いているいる神や霊の正体を見破る古神道系の秘法だ。神や霊が憑いてる場合、神事を行っている時に頭の一部に何らかの刺激を感じる。その部位や感じ方によって、今や未来をある程度予測することも可能なのだ。


「巫寿ちゃん、ウキウキした顔してるね」


三方を整えていると隣の来光くんにそう指摘され、思わず緩む頬を押えた。


「そんなに分かりやすい顔してた?」

「うん。占いとか好きなのかなぁって」

「へへ、大当たり。結構好きなんだよね」


今日は実際に神事を行って憑霊観破法に挑戦する授業だ。毎朝ニュースの星座順位をチェックしていたくらいには占いに興味があるので、実は今日の授業がかなり楽しみだった。


「皆さん用意は整いましたか」


教科担当の先生がぐるりと見渡し満足気にひとつ頷いた。


「ではどなたか斎主(さいしゅ)の役をお願い────」


できますか、と先生が言い切るよりも先に勢いよくみんなの手が上がった。ハイハイハイ!と勢いよく身を乗り出す。

斎主は祭祀を執り行う際中心となって進行させる役割で、二年生から神職過程に進んだ学生が習う分野だ。みんな習ったことを早速試したいらしい。巫女過程に進んだ私は残念ながら分野外なので今回は大人しく見学だ。