あの時、かけられた言葉はぶっきらぼうだったけれど、すごく心配してくれていたのは伝わった。
もしかしたら階段に座り込んでいる私を見つけて、あの時みたいに何かあったのだと思ったのかもしれない。となるとそれで、階段を駆け上がってきてくれたのだろうか。
「……何ともないならさっさと立て。戻るぞ」
「あ、うん」
慌てて立ち上がってスカートの土を払いながら恵衣くんの隣に並んだ。
右手に握りしめていたスマホの存在を思い出して慌てて画面を叩く。通話は切れていた。おそらく友達と話し込み始めた私に気を遣って切ってくれたんだろう。
お礼を送っておこうと思ってトークアプリを立ち上げると禄輪さんからメッセージが二件届いていた。
一件は【また何かあったら電話してくれ】そしてもう一件は。
「お兄ちゃんにはバレないようにな……?」
「は? 何言ってんだお前」
「あ……いや、そうメッセージが来てて」
「何だよそれ」
怪訝な顔をした恵衣くんに「さあ……」と肩を竦める。
とりあえずお礼の返事だけ送っておくことにした。