『逃げたところで奴らは本庁勤めだから、仕事中に泉寿の親が本庁の庁舎へ乗り込んできて結構な騒動になったらしいぞ』


そう言えばそうだった。お父さんとお母さんは本庁の役員、どれだけ住む家をあちこち移そうとも職場は固定されているので、捕まえて話をしたければ本庁に突撃すればいい。

それにしても親が職場まで乗り込んでくるなんて、"複雑な関係"が一体どういう関係なのか非常に気になる。


駆け落ちだとか親の反対だとかドラマの中だけのものかと思っていたけれど、まさかこんなにも身近にいたなんて。それも自分の両親。色々と衝撃的すぎる。


『まぁ、あのお転婆娘がそう簡単に親の言いなりになる訳がない。こっそりまねきの社の結界に、自分たちの結婚を反対する奴らは中に通さないように書き加えたらしい』


もう開いた口が塞がらない。

禄輪さんから度々「お転婆、じゃじゃ馬」と聞かされてはいたけれど、その言い方だと優しすぎる。


「結局、二人の結婚は許して貰えたんですか? ────あ、許して貰えなかったから私とお兄ちゃんには親戚がいないのか」


なるほど、と顎に手を当ててひとつ頷く。

物心ついた頃から周りに親戚と呼べる人はおらず、血の繋がりを感じられるのはお兄ちゃんだけだった。