夕飯を食べている途中で禄輪さんから着信があった。
いつもなら食後は消灯時間近くまで広間でお喋りする所を一足先に抜け、電話をかけ直しながら社頭へ繋がる階段を降りる。
数コール目で出た禄輪さんは少し笑いながら『急にどうしたんだ?』と尋ねる。
「こんばんは、禄輪さん。急に変なこと聞いてすみません。でも気になっちゃって、両親の馴れ初めについて」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見回し、階段の途中に腰を下ろした。
夕飯を食べる前に禄輪さんには「お父さんとお母さんって、いつから付き合ってたんですか?」とメッセージを送っておいたのだ。
『祝寿からはどう聞いてるんだ?』
「お兄ちゃんですか? 特に……あ、お父さんが椎名家に婿入りしたって言うのは聞きました」
なるほど、と頷いた禄輪さん。電話の向こうでガラガラと戸を開く音が聞こえたと同時に風の音が聞こえる。
禄輪さんも外に出てきたんだろう。
『正確に言えば、奴らは交際期間ゼロ日だ』
「え!?」
衝撃的事実に目を向いた。
交際期間ゼロ日……!?
ということはお父さんとお母さんは有名なアニメ映画のプリンセスたちのように直ぐに結婚まで発展したということ?