私と天叡さんのペアはまだ練習を始めたばかりということもあって「見るに値しない」と判断され何も言われていない。
それはそれで少し腹立たしいけれど、来年は私があんなふうにコテンパに言われるのだと思うどそっちの方が気が重かった。
そういう訳で月兎の舞とは何たるかを調べるべく、文殿にやってきた。
調べたことを原稿用紙五枚分に纏めて提出するようにも言われており、似たり寄ったりな事しか書いていない文献に頭を悩ませるいるところだ。
「月兎の舞は未成年者に深夜労働を強いてまで強行される悪しき風習である、と」
「瑞祥、流石にそれやばい」
「我々学生に出演を頼みたいならそれ相応の態度やを見せるべきである、と」
「聖仁、それは本当にやばいって」
いつもなら制止役の聖仁さんが瑞祥さんと同じテンションでご立腹なのが少し珍しい。制止役の天叡さんがちょっと大変そう。
にしても原稿用紙5枚分だなんて、何を書けば……。
「あ、はい! 提案です」
小さく手を上げるとみんなが振り向いた。
「過去の月兎の舞の記録を見て、各年代で比較して分析するのはどうでしょうか?」
おそらく過去に月兎の舞を舞った学生たちも、自分たちなりにこの舞の意味を調べてその解釈を反映していたはずだ。
それを比較すれば何か分かるんじゃないのかと思ったのだけれど……。
「……自分が恥ずかしくなってきた」
「俺も同じ事言おうとしてた」
額に手を当てて息を吐いた二人に、変なことを言っただろうかと不安になる。
手を伸ばした瑞祥さんは私の頭をぐりぐりと撫でた。