「────で、好きな女って恵里ちゃんのこと?」
私たちが内緒話をする時のお決まりの場所である庭園の反り橋の下まできた私達。
固まった泰紀くんをドサリと下ろした嘉正くんは、人のいい笑みを浮かべてそう尋ねた。
「なッ……!?」
言葉に出さずとも分かりやすく肯定した泰紀くんに皆が吹き出した。
ここもいよいよかぁ、と私には少し感慨深い。
恵里ちゃんの片思いはもう一年ほど続いている。
親友である恵里ちゃんとは幼稚園からの付き合いだ。小中と同じ学校に通い高校からは別々になったけれど、帰省すれば会えなかった時間を埋めるように色んな話をする。最近はもっぱら恵里ちゃんが片思い中の泰紀くんについての話題が多かった。
本来なら接点なんてないはずの二人は、去年の夏休みにたまたま一緒に夏祭りに行くことになり出会った。泰紀くんに一目惚れした恵里ちゃんは帰る直前に駅の改札前で公開告白をし、「まずはお友達から」ということで今に至る。
春休みにはデートをしていたし、呼び方もいつの間にか呼び捨てになっていた。この夏休みも二回ほどデートして、ほぼ毎日電話やメッセージのやり取りをしていたらしい。泰紀くんの中で何かが変わり始めているのは薄々感じていたけれど、いよいよ両思いとはなんとも感慨深い。
「二人の関係は皆知ってるし、隠しても意味ないよ」
「どっちかっていうと"いよいよか〜"って感じだしね」
だよな〜、と感慨深そうに頷くみんな。
私と同じ感覚だったらしい。