ん、と手を差し出された。ゆっくりとその手を取って立ち上がる。私以上に冷えきった指先に「わっ」と声を上げる。
「恵衣くんの手冷たい」
途端、カッと耳を赤くさせた恵衣くんが私の手を勢いよく振りほどく。
「だから"もっと迎えに来やすいところにいろ"って言っただろうがッ!」
「えっと……そんなに探してくれてたんだね、ありがとう」
「別に探し回ってないから感謝される筋合いはない!」
鼻を鳴らした恵衣くんは私に背を向けると大股でずんずんと歩いていく。
感謝くらい受け取ればいいのに、と小さく吹き出す。待ってよ、とその背中を追いかけた。
月明かりが私達を照らして影を落とす。観月祭の日に二人で見上げた満月のようで、寂しさも悲しさもいつの間にか夜空に溶けていった。
【続く】



