言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


またこうやって守られてばかりだ。私のせいで皆に危害が及んでいるのに、私だけ何も知らず迷惑をかけてばかり。


「お前、後悔してんのか」


心の中を言い当てられてビクリと肩が震える。恵衣くんは「だと思った」と呆れたように息を吐く。だって、と答えた私の声は情けないほど弱い。

どんどん視線は下がっていって、ひび割れたコンクリートの地面を見つめる。


「だって……私が神修に来なければ、慶賀くんが皆を裏切ることにはならなかった。神々廻芽が私を狙って仕組んだことに巻き込まれて、みんなが怪我をしたり危険な目に会うこともなかったんだよ。これまでの事は全部私のせいで……ッ」

「じゃあ筋肉馬鹿やガリ勉眼鏡に出会ったことも後悔してんのか。薫先生や先輩たちと出会ったことも後悔してんのか。これまで学んだこと経験したこと、出会いも別れも全部後悔してんのか」


みんなの顔が次々と脳裏を過ぎる。

皆に出会ったことを後悔しているか?

そんなの、そんなの。


「後悔するわけないよ……!」


皆に出会って共にす過ごしたこの二年間、楽しいことだけじゃなくて苦しいことや辛いことも沢山あった。たくさんの出会いもあれば別れもあった。

けれどその日々を後悔したことは一度もない。どれも私にとっては大切な思い出だから。


「俺だって同じだ」


カシャンとフェンスが揺れて恵衣くんが動いた気配がした。視線の先に雪駄が見えて、その足は地面に膝を着く。

恐る恐る顔を上げると同時に柔らかいものが頬に触れた。柔軟剤の優しい香りと共に首元がじんわり温まる。