言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー




初めて慶賀くんと話した日のことは鮮明に覚えている。

初めての鬼脈初めての神修。一人心細く車に揺られていた時、一番最初に声をかけてくれたのが慶賀くんだった。

人懐っこくて屈託のないあの笑顔の下に、そんな大きな秘密を隠していたなんて少しも気付かなかった。

じゃあ本当に慶賀くんは私と出会った時から、いいやそれ以上前から、私たちを裏切っていたということなの……?


慶賀くんの口から明かされた事実に、教室は鉛のように重い空気が流れた。みんな俯き堪えるように固く掌を握っている。


「なぁ慶賀」


まるで休み時間に話しかけるように名前を呼ぶ。一番に口を開いたのは泰紀くんだった。


「お前……どういう気持ちだったんだよ」


その問いかけに慶賀くんがハッと顔を上げた。


「皆で必死に方賢さんを止めた時、応声虫を退治した時、ノブくんを助けた時」

「泰紀、俺は……ッ」

「教室で机並べて勉強してる時、放課後に池で亀釣ってる時ッ、悪戯して巫女頭に怒られてる時!」


泰紀くんが傍にあった机に拳を振り落とす。それと同時に瞳から涙が溢れて床を濡らした。

私もだ。ハタハタと涙がこぼれ落ち、溢れる感情を堪えようと袴をきつく掴んだ。