奉仕奉告祭の日、車に乗り込んで直ぐに編入生の姿を探した。確かめないといけないことがあった。
朝からずっと動悸がする。大股で車を移動していると嫌な汗が背筋を流れた。
先頭の車にその姿はあった。
女の子だ。黒髪を一つにまとめた小柄な子。所在なさげにきょろきょろと辺りを見回している。
小走りで駆け寄り女の子の前に座った。
「な……なあなあ!」
心臓が弾けそうなほどうるさい。声のかけ方を間違えたのか、女の子は驚いたらしく後ろに仰け反った。
「噂の編入生だよな!? 俺、志々尾慶賀! 名前は?」
畳み掛けるようにそう尋ねた。
女の子から困惑している雰囲気を感じとって、迎門の面を少しずらしニッと笑ってみせる。頬が引き攣る。
うまく笑えている自信がない。
「あ、えっと……椎名です」
「それ苗字だろ? 名前だってば!」
焦る気持ちでそう聞き返すと、女の子は不思議そうに首を傾げる。
「え、あ、巫寿です」
「ミコト……」
"ミコトという名前の子が君の前に現れたら"
ミコトという名前から何となく男を想像していた。尊とか御言とか。まさかミコトが女の子だなんて、少しも想像していなかった。
迎門の面から少しだけ見える瞳が不安と疑念の色をはらむ。
何か喋らないと不審に思われる、何か。



