君にして欲しいことはたった一つだ。もし近い将来、ミコトという名前の子が君の前に現れたら俺に情報を流すこと。いいね?
男────芽さんが俺に提示した条件はたったそれだけだった。その条件を飲む代わりに、芽さんは毎月賀子を尋ねて清め祓いの祝詞を奏上しにくる。芽さんは言祝ぎが桁違いに強かった。そのおかげで賀子は一命を取り留めている状態だった。
そんな人がどうしてこんなことをしているのだろうか。
何度もそう思ったけれど彼が薫先生の兄貴なのだと知って、それ以上を知るのはあまりにも恐ろしく何も聞けなかった。
そうして月日が流れ、ミコトが俺の前に現れることもなく平穏な日々が続いていた。
このままミコトが現れなければずっとこのままの日々が続く。そうしたらいつか賀子が目を覚まして、何もかも元通りになる。
そんな淡い期待を抱き始めた高等部への進学を控えた春。担任の薫先生から、グループトークにメッセージが届いた。
『高等部から新しい仲間が加わるよ。色々教えてあげてね〜』
心臓が騒ぎだす。
────もし近い将来、ミコトという名前の子が君の前に現れたら俺に情報を流すこと。いいね?
芽さんの言葉が何度も脳裏を過ぎった。



