「上手いこと受肉するかと思ったんだけど、この子言霊の力がなかったんだね。残念だけど、失敗したみたいだ。でもギリギリ死んでないから安心して」
男はまるで夕飯のメニューが予想と外れた時のような軽いノリでため息をこぼす。
「失敗? ギリギリ死んでない? お前……何言ってんだよ」
男は何も答えず、寧ろ不気味に思えてきた微笑みを浮かべてじっと俺たちを見下ろした。
「ふざけんなよ。賀子を……賀子を元に戻せよッ!」
「元通りにはできないよ、言っただろう"ギリギリ生きてる"って。その子を生かしているのは空亡の残穢が持つ妖力だ。今無理やり取り出せばそれこそ本当に死んでしまうよ」
「じゃあどうすれば賀子は助かるんだよ!?」
「忘れたの? 君の妹をそうしたのはこの俺だよ」
男が笑うのをやめた。無機質な瞳に見つめられ背筋が凍りつく。
「────と、言おと思ったけど気が変わった。君名前は? 何歳?」
「え……」
「だから何歳?」
優しい口調に僅かな苛立ちを含ませて聞いてきた。条件反射のように歳を答えると、男は考え込むように「ふむ」と顎に手を当てて俯いた。
「妹を助けるためなら、何でもできる?」



