にやにやと意地の悪い笑みを浮かべた嘉正はさらりとそう受け流した。程なくして店主がお盆に三色団子を乗せて現れる。賀子が好きなピンク色もある。

ほれほれ行ってこい、と背中を押されて渋々歩き出した。

団子がのった盆を片手に、空いた手でポケットをまさぐる。無造作に突っ込んだそれを引っ張り出して目の前で掲げた。

小指サイズの小さな筆のストラップ、書道用品の店でたまたま見付けて買ったものだ。店主いわく、筆を作る際に出た廃材を再利用して作り販売しているらしい。

柄の部分は流石にピンク色はなかったけれど、鳥居のような深い朱が綺麗なものを選んだ。これなら普段筆を使わない賀子でもカバンか何かに付けれるだろうし、おままごとにも使えるはずだ。

小さいからと言って安い訳ではなく、これを買ったおかげで母さんからもらった小遣いはほとんどなくなった。

欲しいポゲモンカードがあったけれど、今回は我慢しよう。


賀子は今頃、どうせ椅子に座って背を丸め、鼻を真っ赤にして俺を待っているはずだ。


確かに俺もちょっと言い過ぎたところはあったし、賀子の気持ちをちゃんと考えてやらなかったことは少し反省している。

団子とこれを渡して、「もう少ししたら帰れるから、家ついたらおままごと付き合ってやるよ」そう言おう。

「にーに赤ちゃん役ね」と言われても今日だけは我慢してやるか。


そんなことを考えながら暖簾をくぐる。



「おい賀子、これお前も食える団子────賀子?」