『慶賀は背が低いから、スポーツは不向きだなぁ』

『やはり志々尾家の血は言霊の力が薄いらしい。慶賀さんは次の宮司には選ばれないだろうな』


どう足掻いても変えることが出来ない産まれ持った素質。それが人と違うこと、人にはあって自分にはないものがあること。それがどれほど悔しくて、簡単に諦められるようなものじゃないかなんて誰よりも分かっていたはずなのに。

きゅっと唇を噛んで俯く。嘉正が俺の肩にぽんと手を置いた。


「ごめんごめん。もうちょっとかかりそうだから、座って待っててもらえる? 好きなの食べていいから」


慌ただしく戻ってきた店主が、隅の座敷を指さして俺にメニューを押し付ける。お品書きと書かれた文字をじっと見つめ、「おばちゃん!」と店主を呼び止めた。


「この中に小麦入ってないやつある?」

「小麦? この辺の団子なら入ってないわね」

「じゃあそれお願い!」


はいよー、と忙しそうに店の奥へ消えていった店主。

嘉正が目を細めて俺の二の腕を小突く。やめろよ、と照れ隠しにわざと顔を顰めた。


「筆の店で買ったやつと合わせてプレゼントして、仲直りしてきなよ」

「み、見てたのかよお前! てか別に喧嘩じゃねぇよ、賀子が勝手に拗ねてるだけだ!」

「はいはい、そうですね」