饅頭屋の取材も中盤に差し掛かった頃、店主が客に呼ばれ「ちょっと待ってて」と俺たちを残して店先へ出たタイミングを見計らって嘉正が困り顔で歩み寄ってきた。


「ねぇ慶賀、賀子ちゃ大丈夫? やっぱり様子見てきた方がいいんじゃない?」


またその話かよ、と顔を顰める。取材が始まってからもう三度目だ。

がしがしと頭の後ろを掻きながら深い息を吐く。


「ほっとけって言っただろ」

「でもまだ五歳だよ。しかもちゃんと妖が見えてる訳でもないんだから、トラブルにでもなったら……」

「ならねぇーよ。今頃絶対に座って待ってっから」


俺がそう言いきったことが想定外だったらしく目を瞬かせる。

かれこれ五年近く賀子の兄貴をしてきたんだから嫌でもわかる。

喧嘩した後叱られた後、誰も相手にしてくれないと分かるとアイツは慌てて追いかけてくる。そして「ごめんなさい」とまた泣いて、結局俺たちが絆される流れだ。

今頃半べそで椅子に座って俺の事を待っているはずだ。


「あんま怒ってやんなよぉ、慶賀」


取材内容をまとめるのに苦戦していた泰紀が、プリント相手に唸りながらそう零す。


「賀子な、お前の真似がしてぇんだとよ」


真似?と眉根を寄せながら聞き返す。