泣けばどうにかなると思っている賀子が昔から嫌いだった。
こいつがちょっとでも泣けば母さんも他の神職たちも賀子の味方。その上アレルギーもあって病気がちで言霊の力もないから、俺じゃ許されないような我儘だって許される。
それを当たり前だと思ってニコニコしている賀子が本当は妬ましかったのだと思う。
「じゃあもう勝手にしろッ!」
膝に顔を埋める賀子にそう吐き捨てて大股で歩き出す。
「ちょ、慶賀! 流石に置いてくのはまずいだろ!」
「そうだよ、危ないって!」
二人が賀子と俺の間で慌てふためく二人に「ほっとけばいいよそんな奴」と吐き捨てる。
そうだよ、ほっとけばいい。
散々駄々をこねてそれでも聞いて貰えないと分かったら、賀子は慌ててついてくる。どれだけ突き放したって結局追いかけてくるんだから。



