やれやれと肩を竦め、どやって賀子の気をそらそうかと思案したその時。
「おう、何も買わねぇぞ! おっちゃんがタダでくれるからな!」
嘉正と俺の手が同じタイミングでそのバカの口を塞いだ。恐らく「なんだよ!?」と言った泰紀は苦しそうにじたばたと暴れる。
このバカ! 少しは空気読めよ!
「かこは……?」
案の定唇を尖らせてみるみる顔を顰める賀子。
「にーに達は宿題を頑張ったご褒美にもらったの! お前は何にもしてないだろ? そもそもお前は筆なんて使わないじゃん」
あったらつかうもん、と謎の理論を持ち出す賀子に天井を見上げる。
頼むからもう勘弁してくれ。
「ダメなもんはダメだ。泣いてもダメ。欲しいなら小遣い貯めて自分で買え」
ぶうたれた顔で俺を見つめる賀子に背を向けて、店主に声をかけた。



