無事一軒目の調査が終わって、二軒目は泰紀が選んだ書道用品の店だった。強面の店主が筆作りの作業を見せてくれた。


「これで完成ってわけだ。簡単に見えて奥が深いだろ」


ふんと鼻を鳴らした店主が完成した筆を俺たちに見せる。

スゲー!と興奮する泰紀に気をよくしたのか「お前ら好きなの持って帰っていいぞ」と店の商品を顎で指す。


「おっちゃんマジでいいの!?」

「よくなかったら言わねぇよ。俺の気が変わらねぇうちにさっさと選べ」


やりぃと指を鳴らしていそいそと商品棚に向かった俺たち。店に出てきた俺に気付いた賀子が「おわったー?」と駆け寄ってくる。

げ、と顔を顰めた。俺が筆を貰えば、絶対に賀子も欲しがってくる。


「終わってないからもうちょっとあっちいってろ」

「いつおわるの?」

「もうちょっとだ!」

「もうちょっとって?」


ああもう!と頭をかいて顔を顰める。

その時「慶賀もう決まったか?」と筆を手にした二人が歩み寄ってきた。下に弟がいる嘉正はすぐに察したらしく、流れるように手にしていた筆を背に隠した。

そして普段から何も考えていない泰紀が気付くはずもなく「お前も早く選べよ〜」と自分が選んだ筆を見せびらかしてくる。


「にーに、ふでかうの?」

「べ、別に何も買わねぇよ」

「そうだよ賀子ちゃん、何も買わないから俺たち」


嘉正の援護射撃にこっそり小さく拝む。ふーん、と少し疑う目で俺を見るも信じたようだ。