賀子に合わせてラーメン屋ではなく定食屋に入った俺たちは昼飯を済ませたあとで夏休みの宿題を開げた。

初めは大人しく絵を描いたり本を読んでいた賀子だったが、直ぐにそれも飽きてしまったらしく泰紀や嘉正に絡み始めた。


「大人しくしてろって言っただろバカ子!」

「言ってない! 走るなとワガママ言うなしか言ってないもん!」

「こいつッ!」


拳を握って立ち上がった俺を二人がまた「まぁまぁ」と宥める。賀子はこのふたりが自分の味方になることを分かっているらしい。腹立たしいことこの上ない。


「そろそろ切り上げて、鬼脈調査の宿題する?」

「だな〜。賀子もせっかく来たのにずっと店ん中じゃつまんねぇよな」

「うん! つまんねぇ!」


ハハハッと笑った二人は筆記用具を片付け始める。


まだ俺、問題解き終わってねぇのに。


途中の計算式を見下ろして唇を尖らせ、ノートを勢いよく閉じた。



鬼脈の野外調査課題は、鬼脈にある店の店主三人にインタビューをして聞いた話をまとめるといったものだ。友達とグループを組んでも良いとの事なので、もちろん嘉正たちとグループを組んだ。

各々に一店舗ずつ検討をつけてインタビューの許可は既に得てある。


「まずは俺の薬種問屋だな」

「やくしゅどんや? にーにそれなに?」

「薬屋だよ、薬屋」

「げー、おくすりー?」