「かしょうくん! たいき〜!」

「え、賀子?」


二人の姿を見つけるなり自分の手を振り切って走り出した賀子。待ち合わせの団子屋の前に立っていた二人は、飛びついてきた賀子を抱きとめる。

二人に駆け寄って顔の前でパチンと手を合わせる。


「マジでごめん! 賀子が付いてくるって言うこと聞かなくて」

「あー、なるほど」


下に沢山兄弟がいる嘉正はそう肩を竦めた。自分にも心当たりがあるらしく「仕方ないよ」と俺の背中を叩く。

泰紀に肩車されてキャッキャと楽しそうに声を上げる賀子にため息をこぼす。


「たいきー! あっち行こ!」


走り出した賀子は歩いていた通行人にぶつかりどしんと後ろに尻もちを着く。

獣耳を生やした妖は、足元に転がる賀子を見下ろして「なんだァ?」と驚いた声を上げた。


「おい賀子!」


慌てて駆け寄り頭を下げる。


「すみません! 俺の妹なんで代わりに謝ります!」

「ああ、そうか。構わねぇよ。しっかり面倒みろよ兄ちゃん」


幸いにも気のいい妖だったらしく、ケラケラ笑いながら「兄貴ってのはいつの時代も大変だなぁ」と去っていく。

ホッと息を吐き、まだ何が起きたのか分かっていない賀子を睨みつけた。