数分後、赤いリボンをつけた白猫のキャラクターが描かれたお気に入りのポシェットを提げた賀子が鼻歌を歌いながら戻ってくる。
遅れて戻ってきた母さんが財布からお札を二枚抜き取った。
「賀子、お昼もまだだから食べさせてあげて」
「えっ、俺らラーメン食いに行く予定なんだけど!」
「分かってるでしょ? 別のにして、賀子が小麦アレルギー出ちゃうから」
もうここまで来れば何を言っても無意味だ。
ムッツリ黙り込んで母さんの手からお金を半ば奪うように受け取りポケットに突っ込んだ。
玄関の扉を開けた賀子が当たり前のように手を差し出してきた。何も考えていない呑気な笑顔が憎たらしい。
その手を無視して歩き出すと、「まってよ!」とカラカラ笑った賀子が走って追いかけてくる。
やっぱり無視して歩き続ける。だって俺がどれだけ無視しようとも、賀子は絶対に追いかけてくるから。



