「おかあさん! またにーにがむしする!」


すぐにまた告げ口モードになった賀子に眉をつり上げた。


「お前っ、また母さんに言いつけやがって!」

「だって、にーにが教えてくれないんだもん!」


生意気に唇を突き出した賀子を睨みつけて深い息を吐いた。


「嘉正たちと鬼脈! 宿題やってから遊ぶ約束してんだよ」

「かしょうくん!? かこも行く!」

「バーカ、連れてくわけねーだろ」

「やだー! かこも行くの〜!」


地団駄を踏んで抗議する賀子を一瞥して立ち上がる。その時、廊下の奥から「もう何事なの?」と呆れた顔をした母さんが出てきた。

賀子に先を越されると面倒なので「母さん賀子が!」と口火を切る。


「鬼脈を調べる宿題が出たから出かけるって言ったら、賀子が自分も行くって聞かねぇんだよ!」


先を越されたことに腹が立ったのか、賀子はブンブンと拳を振り回して俺の背中を叩く。痛くはないけど腹が立ったので仕返しに顔を鷲掴みしてやる。ぴいぴい泣き出した賀子に母さんは自分の額を押えた。


「本当にあなたたちは……兄妹なんだから少しは仲良くして頂戴。賀子、お兄ちゃんはお勉強だから邪魔しちゃ駄目でしょ」

「でもおわったら遊ぶっていってた!」

「あッ、くそバカ子! 余計なこと言うなよ!」

「バカ子っていったぁ〜ッ!」